前向き/後向きとOpen/Close(3)

さて、ここまで前向き/後向きとOpen/Closeの相関性に着目し、
第1~第4象限の論理的な概要を整理した。
そこで、次に現実にはどのように存在しているかを検討してみる。

第1象限:Open-前向き
この領域の姿勢・考え方は「他人の考えを受け入れつつ、
肯定的な表現をともなって推進する意思を持つ」。

この領域の典型例の一つとして、現代アメリカの
プラグマティズムを挙げることができる。

例えばプラグマティズムを完成したと言われる
ジョン・デューイによれば、
それ以前の西洋哲学(究極の真理の探究)とは異なり、
知識は具体的な問題を解決するための手段として
位置づけられている。
また、プラグマティズムの特徴としては、
多元性や対話を重視する点も挙げられる。
これらは前向きでOpenな姿勢を志向するものと解釈できる。


第2象限:Open-後向き
この領域の姿勢考え方・姿勢は「他人の考えを受け入れるが、
否定的な表現をともなって推進する意思は持たない」。
この領域の典型例としては、ポストモダン的思想や
価値相対主義を挙げることができる。

千葉雅也によると、ポストモダン的思想が提示する
概念には型があり、先行理論が排除している他者性に
着目し、その他者性を取り込み、それが核となるような
構造を提示する→この“新しい構造”が常識と齟齬を来す。

これは、まさにOpen-後向きのスタンスであると言える。
他者の観点は視野にいれて検討しているものの、
常識=従来とはあまりに異なるため、
推進しようという機運にはつながらないのである。

 

第4象限:Close-前向き
この領域の考え方・姿勢は「他人の考えを受け入れないが、
肯定的な表現を伴って物事を推進する」ことである。

この領域の典型例としては「原理主義(主にキリスト教
イスラム教」を挙げることができる。
近代化への批判と、(見たこともない)選択的な理想の
世界像を構築し、このままでは終わってしまう世界を
救済する思想などによって特徴づけられる。

これらの要素によって構築された組織は、
組織内/外を明確に区分し、また個人のレベルでの
イングループバイアスと確証バイアスを通じて、
ある特定の原理、及びグループへの依存が強化される。

これらは、他者の意見は受け入れない
(=私(たち)が正しく、外が間違っている)が、
自分たちの世界観で救済を推進する
(このままでは世界が破滅するため)という
考え方・姿勢を表している。